三枝タミの物語 あ・ら・か・る・と 「翼を持った少女」
藤崎専務(みーあのお父さん)はお父さんの起業以来の盟友で5歳くらい年上の人生の先輩でもあります。
タミちゃんのほかに子供が出来たらもう二人っきりで旅行に行く機会なんて年を取るまで持てないからと、「タミちゃんを預かってあげるから二人きりで新婚旅行に行ってこい」とお父さんに強く勧めてお父さんとお母さんは熱海の旅館に2泊3日で二人きりで新婚旅行に行くことにしました。
※ 熱海の旅館は普通の人は予約もできない一泊10万円以上する会員制の超高級な旅館です。
三枝タミの物語シリーズ
三枝タミの物語(前編)
三枝タミの物語(中編)
三枝タミの物語(後編)
三枝タミの物語 あとがき
「三枝タミの物語 外伝:三枝美恵子の章」
三枝タミの物語 あ・ら・か・る・と 「希望ヶ丘の決闘」
三枝タミの物語 あ・ら・か・る・と 「レストランの秘密」
三枝タミの物語 あ・ら・か・る・と 「お父さんとドライブ」
三枝タミの物語 あ・ら・か・る・と 「お風呂上がりのフルーツ牛乳」
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タミちゃんは前のお父さんから「お前はお荷物、生まれてこなかければ良かった」とさんざんふき込まれていたので、他所の家に厄介になるのは気が進みませんでしたが、お父さんとお母さんの邪魔にならないように、お父さんとお母さんが二人で旅行に行くことに同意しました。
本当はお母さんの祖父母にあずかってもらえたらよかったのですが、あまり好かれていないので専務の家で二泊三日預かることにしたのです。
当日の朝
お母さん「じゃあ、タミちゃん行ってくるわね。」
お父さん「タミちゃん。何かあったら電話するんだよ」
タミちゃん「いってらっしゃい」
お母さん「ご面倒をおかけしますがよろしくお願いします。」
お母さんは藤崎専務夫妻に頭を下げる。
藤崎専務の奥さん「責任をもってお預かりします。遠慮しないで思い切り楽しんできてね」
藤崎専務「おう、ショウ(お父さんの愛称)、ちゃんと楽しんで来いよ」
お父さん「タミちゃん、心配だなー」
そうしてお父さんとお母さんは藤崎専務の家にタミちゃんを送り届けると車で熱海に向かいました。
藤崎専務は事前に私が大人の男の人が怖いというのと私のあまりの体の小ささに気を使ってるらしく、少し離れて歩いて奥さんに目配せしました。
そうして奥さんは藤崎専務との間に入って私の手をやさしく握りました。」
専務の奥さん「(本当に小さい子ね・・・本当に小4?5歳くらいに見える・・・。これは気を付けて上げないとダメね。)」
専務の奥さん「それじゃあ、タミちゃん。おばさんたちのお家に行こうか?」
タミちゃん「はい。よろしくお願いします。」
そうして私は初めて他人の家に泊まることになりました。
藤崎専務の奥さん「私たちにもちょうどタミちゃんと同じくらいの年の娘がいるのよ。いいお友達になれるといいんだけど」
藤崎専務の自宅のマンションに入るとリビングに通されました。
藤崎専務の奥さん「美亜ちゃん。こっちにいらっしゃい。タミちゃんよ」
美亜「藤崎美亜です。こんにちはタミちゃん。」
タミちゃん「三枝タミです。コ、コンニチハ・・・。」
私は今まで貧乏過ぎたのと前のお父さんの影響でお友達は一人もいなかったので、美亜ちゃんと会ってとても緊張していました。
美亜ちゃんは私より一回り以上体が大きい子で同年代の子の中でもかなり大柄に見えました。
藤崎専務の奥さん「私は高校の先生をしていてね。勉強でわからないところがあったら見てあげるわよ。タミちゃんは勉強が得意なんですって。美亜は運動は得意だけど、勉強はあまり得意じゃないのよ。少しタミちゃんを見習わないとね。」
美亜「もー、お母さん折角お家に来たのに勉強なんて・・・・」
美亜「(話には聞いていたけど、すっごくちっちゃい子。低学年の子みたい・・・)」
私と美亜ちゃんと美亜ちゃんのお母さんはそれからしばらく三人でトランプやゲームをして遊びました。
※ タミちゃんが怖がるからという理由で仲間に入れてもらえなかった専務。一人でテレビを見るの図
専務の奥さん「あら、またタミちゃんの勝ち?強いわね。」
タミちゃん「これは運のゲームですよね?」
二人とも私にとても気を使ってくれているのがわかりました。
夕方になると美亜ちゃんのお母さんは夕食の準備に取り掛かりました。
専務の奥さん「美亜、そろそろ宿題済ませておきなさいよ。」
専務の奥さん「タミちゃんはどうしようか?テレビでも見てる?」
タミちゃん「私も一緒に勉強します」
専務の奥さん「じゃあ、同じ問題を用意してあげるから、美亜にお手本見せてあげてね」
美亜「もーお母さん酷いー」
専務の奥さん「ふふふ。ちゃんと勉強するのよ」
私はすぐに用意してくれた問題を終えてしまい何もすることが無かったのでじっと待っていました。
専務の奥さん「あら?もう終わったの?タミちゃん?いくら何でも早すぎるわね。」
美亜「(いくら何でもこんな時間では終わる量じゃない・・・。この子、ズルしてるんじゃ・・・?)」
ずっと手持ち無沙汰にしていた藤崎専務がここぞとばかりに「よーし、タミちゃんは本が好きだってことだから、おじさんのコレクションを見せてあげよう」
専務の奥さん「貴方、外国の文学書なんて子供に見せても・・・。」
藤崎専務「ハハハ。まあ、いいじゃないか。勉強の方は食事の後に見てあげることにして、さあ、タミちゃんおじさんの部屋に行こう」
藤崎専務は子供の様に笑って、書斎で自慢の外国文学書のコレクションを見せてくれました。
多分、ほとんど理解できる人が周りにいなくて寂しかったからなんだと思います。
後から聞いた話ですが、藤崎専務は有名な大学の文学部を卒業して有名な一流企業の社員になり、当時居酒屋でバイトしていたお父さんと意気投合して会社の立ち上げに協力して以来の親友だそうです。
会社の立ち上げに協力するうちに熱が入り過ぎて会社辞めてお父さんの会社の役員になったそうです。
私はいくつかの本は図書館ですでに読んだことがあったので、パラパラとめくって中身についてお話すると、藤崎専務は最初は驚いて徐々に興味深げに中身についていくつか質問をしてきました。
そして、何かを確信したかの様に私を連れてリビングに戻りました。
藤崎専務「おい、この子凄いぞ。この年でもう外国語の原書を読んでいる」
専務の奥さん「そんな、まさか・・・・・」
と最初は笑っていましたが、藤崎専務の外国語文学熱を知っている奥さんは、その真剣な目に態度を変えました。
専務の奥さん「食事の後にいくつかタミちゃんに質問したいんだけど、いいですかね?」
藤崎専務「私も興味津々だね」
私は食事の後に専務の奥さんに幾つかの問題を出されてそれを解きました。
藤崎専務も真剣な目でそれを見守っていました。
藤崎専務「どうだい?」
専務の奥さん「凄いですね。この子。教科によってばらつきはありますけど、ほとんど高校終了程度の内容は理解してるみたいです。いくつか勘違いしているところはありましたけど、少し教えたら凄い勢いで覚えていきました。」
藤崎専務「天才という奴か。そういえば、外国語も発音はかなり怪しかったな。」
専務の奥さん「多分ギフテットでしょう。私も会うのは初めてです。」
※ギフテッドとは先天的に、平均よりも、顕著に高度な知的能力を持っている人のこと。
専務の奥さん「普通の人ではいけない高みに登れる翼を生まれながらに持っているようね。」
藤崎専務「(翼を持った少女・・・か)」
藤崎専務「タミちゃんはこういうことはどうやって覚えたんだい。?」
タミちゃん「えと・・・・学校とか市の図書館で本を読んで覚えました。」
専務の奥さん「ひょっとして・・。タミちゃん。さっきのゲームはどうやっていた?」
タミちゃん「えと・・・。トランプの枚数と表に出てるカードから確率を計算してました。みんな同じことしてると思うから。運のゲームですよね?」
専務と奥さんは私の話を聞いて、顔を見合わせました。
藤崎専務「(この子はこれだけの能力を持ちながら、周りにそれを認めてくれる人がいなくて誰にも気が付かれずにここまで来たのか・・・。なんて不憫な。)」
美亜ちゃんはお父さんとお母さんのやりとりを聞いて泣き出してしまいました。
美亜「お母さん、なんでタミちゃんは何でもできるのに私はできないの?」
専務の奥さんは美亜ちゃんをそっと抱きしめて、「タミちゃんは実のお父さんに虐められたり、学校で一人ぼっちで生きてきたのよ。だからね、神様が普通の子と同じように生きて行けるように贈り物をしてくれたのね。美亜はお父さんに虐められるのと少し賢いのとどっちがいいかな?。私たちもタミちゃんのことをもっとよく知って、タミちゃんのお友達になってあげましょう。美亜ならわかるわよね?」
そう優しく言いました。美亜ちゃんはそれからしばらくぐずっていましたが、お母さんの言うことを理解したようで、泣き止んで宿題を終えました。私はその姿を見て、とても強くて優しい子だと感じました。
そして私と改めて友達にになろうと言ってくれました。
私に生まれて初めてお友達ができた瞬間でした。
こうやって、私は今までみんなから無視されてきて自分もその重大さをよくわかってなかった能力を見出されました。
専務や奥さん、美亜ちゃんは二泊三日の間わたくしにとてもよくしてくれ、楽しく過ごしました。
藤崎専務とは時々、外国語文学書の中身についてお話をしました。
専務は私が帰るときとても名残惜しそうに見送ってくれたほどです。
藤崎専務「外国文学について語りあえる貴重な友人がもう帰ってしまうのか・・・」
専務の奥さん「貴方、いくらなんでも失礼ですよ。」
お父さん「タミちゃん、ただいま。二泊三日どうだった?」
お母さん「タミちゃん。寂しくなかった?」
タミちゃん「お帰りなさい。とてもよくしてもらいました。美亜ちゃんとお友達になったんだよ。」
美亜「タミちゃん。また来てね」
タミちゃん「美亜ちゃん。また会おうね」
そうして私は初めできたお友達と別れました。帰るときに、美亜ちゃんはいつまでも私に手を振っていました。
後日談
会社にて。
藤崎専務「タミちゃんは凄いぞ。すぐにアメリカの大学に入れてMBAを取らせて、うちの経営に参加してもらうべきだ」
お父さんはそのセリフを聞いて怒り狂いました「専務は俺からタミちゃんを取り上げるつもりか?」
「アメリカ?グレて麻薬中毒にでもなったらどうするんだ?。銃で撃たれたらどうするんだ。アメリカなんて行かせたら心配で夜も眠れない。タミちゃんは俺の宝物だぞ、絶対に渡さない!」
こうして、藤崎専務の案はお父さんの親ばかに一蹴され日の目を見ることはありませんでした。
あとがき
タミちゃんが普通の子でないことがわかるわけですが、タミちゃんのあまりにまぶしすぎる光(才能)は目を眩ませ、周りにあるはずの影を目に入らなくしてしまいます。
かなり後の方になってお母さんもお父さんもそのことに気が付いて後悔することになります。
どういうことなのかは機会があったら触れたいと思います。