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三枝タミの物語 あ・ら・か・る・と 「タミちゃんと渚の大冒険」

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Byhslre

社会科見学のタミちゃんと渚

タミちゃん「今日は学校の社会科見学なのだ!お船で1時間くらいの離島の博物館に来ているのだ」
渚「タミちゃーん。少し自由行動出来るみたいだけど、どうする?」
タミちゃん「ここはお店も何もないのです。なんでここで休憩なのでしょう?」
渚「船の待ち時間だって。」

クラスメイトA「渚様と三枝さんが何か話してる。何話してるんだろ。」
クラスメイトB「何か難しいお話してるんでしょ。三枝さんってすごく頭いいんだよね?」
クラスメイトC「渚さんより頭いいみたいよ。」
クラスメイトA「ウッソー。渚様ってもう小6までの勉強終わってるんでしょ?」

三枝タミの物語シリーズ

三枝タミの物語(前編)

三枝タミの物語(中編)

三枝タミの物語(後編)

三枝タミの物語 あとがき

「三枝タミの物語 外伝:三枝美恵子の章」

三枝タミの物語 あ・ら・か・る・と 「希望ヶ丘の決闘」

三枝タミの物語 あ・ら・か・る・と 「レストランの秘密」

三枝タミの物語 あ・ら・か・る・と 「お父さんとドライブ」

三枝タミの物語 あ・ら・か・る・と 「お風呂上がりのフルーツ牛乳」

三枝タミの物語 あ・ら・か・る・と 「翼を持った少女」

三枝タミの物語 あ・ら・か・る・と 「マーケティングリサーチ」

三枝タミの物語 特別編 「タミちゃんの物語を通じて問いかけたかったこと」

三枝タミの物語 あ・ら・か・る・と 「渚登場」


三枝タミの物語 あ・ら・か・る・と 「いんたーみっしょん」

三枝タミの物語 あ・ら・か・る・と 「渚とタミちゃん」

三枝タミの物語 あ・ら・か・る・と 「いんたーみっしょん2」
渚「下の方に小川が流れてるね。降りてみようか。」
タミちゃん「タミも行く!。」

>お店の廃墟発見
下の方には小さな小屋のようなところがありました。
タミちゃん「これは・・・昔のお店?」
渚「昔はお店があったみたいね。」

足をくじいた渚
お店の廃墟があった周辺はかなり荒れており、歩いているうちに渚はひどく足をくじいてしまいました。
しかし、小さなタミちゃんでは渚に肩を貸して歩いて上り坂を上るわけにはいきませんでした。

タミちゃん「渚ちゃん。先生呼んでくるね。」
渚「うん。待ってるね。」

タミちゃんは急いで先生の所に戻りました。

タミちゃん「先生、渚ちゃんが足を怪我してしまったのです。」

渚を見る先生
タミちゃんは先生を連れて戻ってきました。
先生は渚の足の様子を見ると・・・
先生「うーん。これは下手に動かさないほうがいいかも。凄く腫れてるなあ。クラスのみんなも連れて帰らないとダメだから、本土に戻ってからタンカを持ってくるよ。」
タミちゃん「じゃあ、タミが渚ちゃんについてまっているのです。」
タミちゃんは船は結構ギリギリの大きさだったのでそういうこともあるかなと思いました。
何よりこの島は本土からそんなに離れていません。
タミちゃんたちが乗ってきた船は定期便なので他の所にもよって一時間ですが、直接来るなら30分もかからないと言われていました。

先生「よし、三枝君。じゃあ頼むよ。」

お任せタミちゃん
タミちゃん「お任せなのです。」

タミちゃんは渚と一緒に島に残ることにしました。

しかし、船が本土に到着する少し前に海が荒れ始めました。


慌てる先生
先生「島に子供が二人取り残されているのですが・・・」
職員「この荒れようでは船を出すのは無理ですよ。」

一方、島に取り残されたタミちゃんと渚は・・・

タミちゃん「おかしいのです。先生が戻ってこないのです。少し様子を見てくるのです。」
タミちゃんは桟橋に様子を見に行きました。
大変だ!
そこには誰もいなくて、海はとても荒れていました。

タミちゃんは渚のところに戻って
タミちゃん「渚ちゃん大変です。海がものすごく荒れています。お船が出せないのかも。」
渚「え・・・私たちここで取り残されちゃったの?」
当たりは暗くなりはじめ、小雨が降ってきていました。

半べその渚
渚は足の痛みと疲れで半べそになりながらタミちゃんを見ました。
タミちゃん(渚ちゃんがかなり参ってるみたいです。ここは私がしっかりしなくては・・・)

小屋に避難
タミちゃんと渚はとりあえず雨を避けるため、廃墟になっている小屋に入りました。

タミちゃんはリュックから乾パンを出しました。
タミちゃん(こんなこともあろうかと思ってカンパンを持ってきていたのです。)
※ 貧乏時代からの単なる習性です。
タミちゃん「渚ちゃん。何か食べるもの持ってますか?」
渚「お菓子を少し持ってるかな。」
タミちゃん「私はカンパンを持っているのです。分け合って食べましょう。水筒にお水汲んできますね。」

タミちゃんは郷土博物館の近くにある水場に行って水を汲んできました。
※ 郷土博物館は昔は有人でしたが、今は無人です。

タミちゃんは小雨が降りだす中、渚とタミちゃんの2つの水筒を持って水を汲みに行きました。

タミちゃんが戻ってくると二人か持ってるお菓子と乾パンを分け合いました。
タミちゃん「カンパンは少し残しておいて明日の分にとっておきましょう。」
渚「お父さんとお母さん心配してるかなあ・・・」
渚「私がここに来たいと言ったばかりに・・・。ごめんねタミちゃん。」

抱き合う二人
そういって渚は半べそをかきました。
タミちゃん「タミは大丈夫ですよ。渚ちゃん。」
タミちゃんはそれを聞いて思いました。
(お父さんとお母さんはタミがいなくなっても別に悲しまないかもしれない・・・)
それは前のお父さんに何度も何度も殴られて、「お前らは邪魔なお荷物だ」と刷り込まれてきたタミちゃんの思い込みでした。
だからタミちゃんは渚が両親を恋しく思う気持ちを聞いても自分も寂しいとは思いませんでした。
しかし、渚は熱を出して弱っているところにタミちゃんのこの状況でもビクともしないのは精神力が強いからだと誤解していました。


渚はくじいた足が酷く腫れていて、熱も出していました。
ハンカチで足を冷やしていましたが、気休め程度にしかなってないようでした。
渚はぐったりして倒れるように眠りにつきました。

タミちゃん(渚ちゃんがかなり参ってるみたいなのです。明日になったら救けが来るでしょうか・・・)

そのころ、タミちゃんと渚の両親は学校に呼ばれていました。

説明を受けるお父さんたち
先生「まことに申し上げにくいのですが、タミさんと渚さんが離島の博物館に取り残されてしまいまして・・・」
お父さん「今から、助けに行けないのですか?」
教頭先生「現在、波が高くて船が出せないのです。」
お母さん「貴方・・・」
お母さんは心配そうにお父さんを見ました。」

激怒するお父さん二人
渚のお父さん「大体、小 学 生の女の子二人だけで島に残すなんて学校の管理不行き届きではないですか?」
渚のお母さん「携帯電話は通じないのでしょうか?」
教頭先生「基地局はあるようなのですが・・・」
先生「当校では携帯は禁止ですし、渚さんとタミさんは携帯をお持ちですか?」

MK5(マジで切れる5秒前)のお父さん
()MK5 マジで切れる5秒前のお父さん)

お父さん「私は与えたかったのですが、学校の方針ということで持たせてませんよ。」
お父さんはかなり苛立たしいという口調で言いました。
お母さん「こんなことになるなんて・・・・」
教頭先生「天候と波が回復したらすぐに救助に向かいます。」
お父さん「もういい、ここにいても話にならん。」
お母さん「貴方・・・・どうされるのですか?」
お父さん「私に任せなさい。」
お父さん「雨と風も強くなってるし、今日はもう無理でしょう。こちらでヘリを手配します。天候が回復して飛べるようになったら即出発します。鷹宮さんも希望されるなら一緒にお連れしますが、どうされますか?」
渚ちやんの両親「是非お願いします。」
お父さんはあちこちに電話をしてヘリを手配し、藤崎専務に電話をかけてタミちゃんが子供二人だけで遭難したことを説明して明日会社を休むことを伝え、留守中の会社を頼みました。
藤崎専務は外国文学の貴重な友人であるタミちゃんをしきりと心配していましたが、会社の方は任せろと最終的には言ってくれました。
支援している市会議員数名にに電話して事情を説明するとすぐにやってきて、救急隊員をチャーターしたヘリに同乗できるように手配してくれました。
市会議員は市長にもすぐに連絡を取ってくれました。
お父さん「これで後は天候の回復を待つだけです。隣町のヘリポートにヘリを用意してますので、車で向かいましょう。天候と波の状態はリアルタイムでモニターできます。」
先生たちはお父さんのあまりの行動力にポカンとしていました。

お父さんとお母さんと渚ちゃんの両親はヘリポートに向かいました。

見送るお母さんズ1

見送るお母さんズ2
救急隊員もヘリポートに到着し、あとは天候の回復を待つだけになりました。
ヘリの人数制限から、お母さんたちは残ることになりました。

そうして、本土ではお父さん主導でタミちゃんと渚の救出作戦が進んでいましたが、離島のタミちゃんたちは・・・


励ましあう二人
タミちゃん「渚ちゃん、頑張って・・・・」
タミちゃんは渚の手を握りながら熱でうなされている渚を励ましていました。」
やがて夜も更けて渚は気を失うように眠り、タミちゃんも睡眠をとっていると・・・・

ガリガリガリガリガリ

何かが木製のドアをひっかく音が聞こえました。

犬だ!
タミちゃんがドアの隙間から除くと

タミちゃんと同じくらいの大きさの中型犬が見えました。
タミちゃんと目が合うと、猛烈に体当たりをしてきました。

耳をふさぐタミちゃん
これにはさすがのタミちゃんも耳をふさいでへたり込んでしまいました。
しかし、小さなころから何度も何度も実の父親に殴られてきたタミちゃんは、自分の身を守らないと生きてはいけないと身に染みてわかっていました。
体に刻み込まれいると言ってもよいです。

渚は熱を出してまだ倒れるように寝ており、目を覚ます気配はありませんが渚が目を覚ましたらこの状態では一気に精神的に参ってしまうとタミちゃんは思いました。

夜が明けてきました。
この時点で雨と風は既に普通になっていましたが、海は依然として荒れていました。

朝陽に向かって
本土のタミちゃんと渚ちゃんの救出チームを乗せたヘリが離島に向かい出発していました。

犬の体当たりで扉はどんどんガタガタになっていき、破られるのも時間の問題の様に見えました。
タミちゃんは渚を守るために意を決して外に出ることにしました。

タミちゃん小さな窓から外に出て屋根の上に上ると犬に向かって木の欠片を投げつけました。
しかし、犬は扉への体当たりをやめません。

立ち向かうタミちゃん
タミちゃんは仕方無く、屋根から降りると木の棒を拾い犬を威嚇しました。

タミちゃん「こっちだ!」
犬はタミちゃんに猛然と吠え掛かってきました。

タミちゃんは渚を守るために郷土博物館に向かって走りました。
タミちゃんは拾った木の棒で犬をけん制しながらなんとか博物館前の広場にたどり着きました。

タミちゃん大ピンチ
上空にはお父さんたちの乗ったヘリが見えていました。

ヘリの中・・・・
お父さん「あれは・・・タミちゃんが野犬に襲われている。降ろしてくれ。俺はここから飛び降りる。」
救急隊員「落ち着いてください。この高さから落ちたら死にますよ。」
眼下には木の棒を振りまわして防戦一方のタミちゃんが野犬に棒を齧られて奪われていました。
そしてタミちゃんが逃げようとすると後ろから野犬がタミちゃんのリュックを齧って振り回して飛ばしていました。
「ああっ」
そのシーンを見て全員が小さく悲鳴をあげました。

お父さん「早く降ろしてくれ!!!。このままではタミちゃんが野犬にやられてしまう!!!」
お父さんは切羽詰まって叫びました。

救急隊員A「お父さん、安心してください。あんな小さな子が勇敢に立ち向かってる姿を見て、燃えないような奴はうちにはいませんよ。絶対に助けて見せます。」

お父さんを落ち着かせるためにそういいましたが、、救急隊員の人たちも全員唇の色が変わるくらい噛みしめていました。

ヘリは予定されていた地点に着陸すると、待ち構えていたお父さんと救急隊員はダッシュでタミちゃんの元に走りました。

お父さん「絶対に間に合わせる」

その少し前のタミちゃん・・・

犬「グルルルルルルル」
タミちゃんは木の棒を振り回しながら大声で叫びました「あっち行け、えいえい」

棒を取られるタミちゃん
犬はタミちゃんの攻撃を難なくかわすと体勢を崩して止まった瞬間に木の棒を齧って投げ捨てました。

リュックを齧られるタミちゃん
タミちゃんは後ろを向いて逃げようとしましたが、リュックを齧られて振り回されて飛ばされました。
犬は慎重にタミちゃんの様子を伺ってているようでした。

倒れるタミちゃん
タミちゃん(ダメだ・・・力ではかなわない・・・・)
タミちゃんは絶望的な気分を味わっていましたが・・・・
前のお父さんに殴られた日々を思い出し
「あの時ほど絶望的じゃない」

起き上がるタミちゃん
そうしてニコリと笑いました。
タミちゃんの目に不穏な空気を感じたのか犬は慎重にタミちゃんの様子をうかがっています。

反撃のタミちゃん
起き上がったタミちゃんはリュックから出した上着を左腕に巻いて犬の前に突き出しました。
それは昔隣に住んでいたおじいさんが警察犬の訓練に使う方法だと教えてくれたものでした。
タミちゃんの脳裏には今までの出来事が走馬灯のように駆け巡っていました。
タミちゃんの生存本能がとっさに体を動かした結果でした。

犬の攻撃!

投げ飛ばされる犬
お父さんが博物館の前についた時上着がまかれたタミちゃんの右腕に犬が噛みついて、犬の突進してくる勢いを利用してタミちゃんが犬を上着ごと投げ飛ばしたところでした。
犬は「ギャン」と悲鳴のような鳴き声を上げて吹っ飛んでいきました。

お父さん「タミちゃん!」
お父さん「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ」

お父さん登場!

犬をけん制
お父さんは雄たけびを上げながら猛然とダッシュして、タミちゃんを犬から庇うように抱きかかえると、救急隊員が吹き飛ばされて起き上がってきた犬をけん制していました。

犬は中型犬でタミちゃんにはかなり大きく見えましたが、大人の人にとってはそれほどの脅威ではなく、数人の大人の男性が到着すると逃げていきました。

タミちゃんとお父さん
お父さん「よく頑張ったねタミちゃん。偉かったぞ。」

救出後のタミちゃん

お父さんの顔を見て「助かった・・・」と私は思いました。
お父さんと救急隊員の人は私の勇気を口々に称えました。
ヘリの中から一部始終を見られていたことをこの時私は知りませんでした。
私は渚ちゃんが下の小屋で熱を出して寝ていることを説明しました。
「渚ちゃんが熱を出して倒れているの。お父さん助けて。」

小屋の場所を案内して犬に体当たりされて壊れかかっていた木製のドアを無理やりこじ開けると、渚ちゃんはまだ倒れるように眠っていました。

渚も救出
渚ちゃんのお父さんが渚ちゃんを抱きかかえると渚ちゃんは目を覚まし泣きながらお父さんにしがみついていました。
渚「タミちゃんがずっと励ましてくれたんだよ」
渚のお父さん「そうか・・・犬に立ち向かったのも渚を助けるためだったんだね。タミちゃん本当にありがとう。」
私は渚ちゃんが救出されるところを確認すると、気力を使い果たしていたので、ほっとするあまりお父さんの腕の中で気を失いました。
そこから先のことはよく覚えていません。

朝陽を背にして
渚ちゃんを救出するとそこから全員でヘリに乗って病院に向かったとのことでした。
目を覚ましたら病院についていて病室で寝ていました。
病室にはお母さんが椅子に座っていました。

お母さん「良かった。タミちゃん。心配したのよ」
タミちゃん「お父さんは・・・・?」
お母さん「お父さんはいろいろな手続きをしたり事情を説明して回っているわ。」
後で聞いた話では救急隊員の人やお父さんが、疲れ切っている私と渚ちゃんに事情聴取しないようにいろいろと動いてくれたらしいです。

渚ちゃんは足の腫れが酷くて痛み止めを飲んで寝ているということで、その日は会うことが出来ませんでした。
私は犬にかまれた腕も上着に守られていて怪我はしていませんでしたし、擦り傷くらいなので入院するほどではなかったのですが、「うちに帰る」というとお母さんが心配のあまり泣いてしまったので、一晩入院して念のために検査をすることになりました。

後日談

私は友達を庇って人命救助をしたということで市から感謝状を貰いました。
全てが終わった後、お父さんと渚ちゃんのお父さんが市会議員の人と教育委員会と市役所を回って激しく学校の管理体制を責めたので、どこかで美談を作らないと責任問題になるからなんだと思います。
ヘリのチャーター代は市が一部を負担したそうです。
渚ちゃんは三日後に退院しました。
私は次の日に退院して渚ちゃんをお見舞いしに行きました。
学校ではこの事件の対応で大混乱しており、渦中の人である私は三日間は自宅で静養するように先生から言われました。
この事件は地方局のテレビ番組でテロップが出て、それを見た美亜ちゃんのお母さんが「タミちゃんが犬にかまれて大けがしたに違いない」と大騒ぎして、仕事が抜けられない両親に代わって、美亜ちゃんが学校を早退して様子を見に来てくれました。

私はこの事件以降、お父さんに不思議な感覚を抱いていました。
前のお父さんにはずっと殴られてきましたが、今のお父さんは魔獣の様に見えたあの野犬から身を挺して私を庇ってくれました。
この事件以降、上手く表には出せませんでしたが、お父さんに対する見方が大きく変わったことは確かでした。

犬は飼い犬が捨てられたものらしく、博物館が有人の時はゴミをあさっていたらしいのですが無人になってからはかなり飢えていたらしいです。
お父さんは「人を襲うような野犬は放置できない」と言って市役所に駆除を要請しました。
市役所は今回の事態を重く見て、即野犬を駆除しました。
市が対応しない場合は自分で業者を手配して駆除するつもりだったらしいです。
「ちょっとかわいそうな気もするけど、タミちゃんを襲った野犬を放っておくことは出来ないからね」と笑っていっていました。

先生たちはこの事件以降、お父さんのあまりの行動力と財力と顔の広さに驚いて「決してお父さんには逆らわない」という方針になってしまいます。
事件終了後、自分たちの首が飛ばないようにひたすら祈っていたみたいです。
私に対しては明らかに態度が変わり、ますます腫れものに触るような感じになりました。

こうして、私と渚ちゃんの小さな大冒険は幕を閉じました。
この事件からしばらく、私は友達のために野犬にたった一人で立ち向かった勇敢な少女と有名になりました。
幼 児 のような私が同じ位の大きさの犬を撃退したのが大人たちにとっては衝撃だったみたいです。
あとから考えると渚ちゃんが万全の状態か、大人の人が一人でもいたらあの犬は襲ってこなかったんじゃないかと思います。




あとがき
今回のお話は「三枝タミの物語」に冒険的なお話を入れたいと思って思いついたものです。
単なる思い付きなので、本当に予定外に急遽入れたものです。
タミちゃんは年齢の割には小さな女の子なので、野犬でもRPGの中ボスと戦うようなスリリングな状況が書けるのではないかと思い作ってみました。


作中ではお父さんがギリギリ間に合わないタイミングで助けに入りますが、これはタミちゃんが野犬を単独撃破したという事実を強調するためです。
タミちゃん ( 5 歳 児 相当)vs中型野犬の低レベルな頂上対決はお父さんが助けに入らなくてもタミちゃんが勝っていました。
※ その場合、タミちゃんは怪我をしていたものと思います。
もし仮にヘリで無くて船でチンタラ助けに行っていた場合、タミちゃんは腕にかなりの怪我を負い、お父さんは大激怒して先生たちを容赦なく追い詰めていたでしょう。
犬とタミちゃんの戦いも血が飛び散るかなり凄惨なものになったと思います。犬は死にますがタミちゃんもトラウマになっていたと思います。

今までの話を読んでない人はタミちゃんが乾パンを持っていることに違和感を感じるかもしれませんが、タミちゃんは設定上、保存食を集めるのが趣味ですので、遠足や社会見学など遠出するときは必ず持ち出しています。
今のお父さんからお小遣いをもらうようになってからは乾パンがマイブームになっています。
お父さんはタミちゃんがネットの巨大ショッピングモール「ジャンゴ」から時々乾パンを買っているのを見て、家の防災用品として乾パンをまとめて買って一部をタミちゃんの保存食にこっそり追加してあげたりしています(笑
追加しているのはタミちゃんのストックの中にお母さんとタミちゃんの分しかなかったためお父さんの分として追加してあげています。
お父さんはカンパンを好きなだけ持って行ってもいいよと言っていますが、タミちゃんは遠慮しています。
追加される分に関してはカンパンの魔力(?)に勝てないので受け入れています。
貧乏時代に食うに困ることが多かったことから来ている趣味ですが、お父さんはかなり面白がって協力してあげています。
カンパン代は別に出してあげるよと言ってるくらいです。
保存食のことはお母さんはもちろん知っていたのですが自分が貧乏させていたのが原因で恥ずかしかったのでお父さんには内緒にしていました。
この趣味がお父さんにバレたときお母さんは赤面してしまいます。
今回の一件でタミちゃんが乾パンを有効に活用しているのを見て、お父さんはますます乾パンの重要性を認識します。
渚からタミちゃんに乾パンを分けてもらったことを聞いた渚のお父さんはタミちゃんに「良く乾パンなんて持っていたね。」と言い、それを聞いたタミちゃんは「常に不測の事態に備えているのです」と答えて、渚のお父さんはタミちゃんのお父さんに「素晴らしい教育方針ですな」と言われて鼻高々、お母さんは貧乏時代のことを思い出してまたしても赤面してしまいます。
今回消費したカンパンはお父さんが全額負担して補充しました。

多分、同年代の女の子がこれだけ野生の動物に追いつめられると諦めてギブアップしてしまうと思います。
しかし、タミちゃんは(不幸なことに)この年にして「生き残るために死力を尽くす」ということを知っているので、友達を助けるためにたった一人で自分よりはるかに強い野犬に立ち向かい、何とかしてしまいます。


犬の対処法を教えてくれたお爺さんは例のタミちゃんが実のお父さんに殺されそうになった時にお母さんに知らせて、助けてくれたお爺さんです。
無料でたくさん本を読める場所として図書館のことも教えてくれたりしていました。
タミちゃんはこのお爺さんにいろいろなことを教えてもらっています。
タミちゃんは母方の祖父母にも父方の祖父母にも疎まれていたので、実質的には年寄りにはこのおじいさんからしか可愛がってもらってませんでした。
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Comments 2

きにちみ  

何かと受動的だったタミちゃんとは今回は明らかに違いますね。
途中で少しだけ過去の出来事がフラッシュバックしてましたが、少し前のタミちゃんだったらここまで活動的にはなれなかったんじゃないでしょうかね。
私としてはいつも空振りに終りつつも積極的な三枝さんの姿勢を日々見るにつけ、タミちゃんもそれに少しずつ感化していっているのかもしれません。

最後にお決まりの一言
でもタミちゃん、C学生になったら出て行っちゃうものね。
(´・ω・`)

2018/08/28 (Tue) 10:41 | EDIT | REPLY |   

hslre  

Re: タイトルなし

> 何かと受動的だったタミちゃんとは今回は明らかに違いますね。
> 途中で少しだけ過去の出来事がフラッシュバックしてましたが、少し前のタミちゃんだったらここまで活動的にはなれなかったんじゃないでしょうかね。
> 私としてはいつも空振りに終りつつも積極的な三枝さんの姿勢を日々見るにつけ、タミちゃんもそれに少しずつ感化していっているのかもしれません。
>
> 最後にお決まりの一言
> でもタミちゃん、C学生になったら出て行っちゃうものね。
> (´・ω・`)

コメントありがとうございます。
タミちゃんは北村にトラウマを植え付けられて、今のお父さんに会った時は明らかにおかしい状態になっています。
今のお父さんはいろいろ頑張って空回りしますが、それはすべてが無駄ではなく、タミちゃんは徐々に心を開いていきます。
タミちゃんはとても頭がよい子なので、理屈ではわかっていますが、心が納得していない状態です。
今回のお話は突然思いついたものですが、これが大きな転換点の一つになっていると思います。
昨日まで他人だった男の人にすぐになついたらやっぱりおかしいですよね。
この話以降、タミちゃん自分からいろいろ動くようになります。

> でもタミちゃん、C学生になったら出て行っちゃうものね。
> (´・ω・`)

そうですね、それはもう決まっています。
ここがタミちゃんの人生の中で一番楽しかった時代で、純粋な子供でいられた時代だったんじゃないでしょうか。
毎日が楽しいお祭りのような日々ですが、お祭りはいつか必ず終わります。
そして子供時代もいつか終わり、守られる側から守る側に変わります。
それが遅いか早いかだけです。

2018/08/28 (Tue) 20:29 | EDIT | REPLY |   

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